wowowで放送されて録画だけしてずっと温存していた映画「メタモルフォーゼの縁側」。
映画って2時間まるっと時間を拘束されるので「ヨシ、見るぞ!」ってモチベーションにならないとなかなか見る姿勢になれない私ですが。
ようやく今日再生ボタンを押せました。
劇場公開当時、すごく評判がいいということだけは耳に入っていたのでずっと気になっていた作品でした。
いや〜、本当によかった。素晴らしい作品でした。
私、女優としての芦田愛菜さんを初めて拝見したのですが。
はぁ〜〜〜〜まぁ本当に素晴らしい役者さんであることを2時間でしっかりと叩きつけていただけた。
私の大好きなTV番組「博士ちゃん」でサンドウィッチマンの2人と一緒にMCしてて
めちゃくちゃ博識で「なんで愛菜ちゃんそんなことまで知ってるの?」っていつも伊達さんにびっくりされるくらい本当に幅広くいろんなこと知ってる頭脳明晰さも存分に発揮しながら、でもちゃんと年齢相応の茶目っけさも持ち合わせてて本当になんて魅力的な人なんだろう愛菜ちゃんは…っていつも思っていたけれど。
その普段の「芦田愛菜」としての人柄から自然と香りたってくる愛菜ちゃんのしゃんとした気品さ上品さ、みたいなものが今回の映画では全てまっさらに良い意味で消えてて
いつも猫背で下向いて歩いてて髪もはねててお洒落っけゼロの素朴な女子高生うららがそこにいました。
愛菜ちゃんが1ミリもそこには存在していなくて、うららが出ているシーン、全て感嘆のため息が出ちゃうくらい真っ直ぐででも人目気にして自信なくて自分のこと責めちゃう愛おしいうららがそこにいました。
なのでぐいっと一気に見入っちゃったので2時間があっという間に過ぎてしまった。
ただただ心地いいうららと老婦人の雪さんのやり取りで「あぁいいなぁ」「あ、がんばれ…!」って。
心地のいい2時間の拘束タイムになりました。
見終わったあともなんかじわじわ広がっていく後味があるから「やっぱりもう一度みたいかも」ってふわ〜っと体に浸透していく不思議なリピート希望感覚がある。何これすごい。
あと劇中で、うららが全力疾走するシーンが何度も出てくるんですけど、全部いいんですよ!
走り方がシーンによってちょっとずつ違うんですよ!
走るシーンってよくありがちですけど、走るってことはそれほどの感情の発露があるってことじゃないですか。
それが伝わってくるんですよ〜、見てるこっちにちゃんと!!!それがすごいよくてすごい好き。
恥ずかしくて居た堪れなくて逃げるように走るシーンは腕ブンブン振ってゼンマイ仕掛けのおもちゃみたいにダダダダってまるでちっちゃい子みたいに走るんですけど
「楽しかった」って言って走るシーンは翔んでるんですよ〜、タッタッて、一歩ずつが軽やかで翔ぶように走っててそれがすごい可愛くて。
大切な約束に間に合うために走るシーンは眉毛八の字に下げながらとにかく必死に、必死に全力で走ってて。
あぁ、全部違う…ただ走ってるだけじゃない…っていうのがすごい伝わってきて。
どれもすごい純粋な感情が伴ってて、人にどう見られるかとか、形に捉われてすぎてないのにでもすごい綺麗で、美しい走り方なんですよ。
すごいすき。うららの走ってるシーン。全部すき。
っていうかうららのシーン全部素敵ですごいすき…
はぁ本当に愛菜ちゃんのお芝居が素敵で素敵で…はぁ愛菜ちゃん…あなたって人は…
雪さんに話しかける時の「っあの、」の言い方がいつも一拍置いて「ヨシ」って心に決めてからぎこちなく話し始めるところ可愛いし、返事する時も「あ、は、はいっ」ってどもっちゃうけど一生懸命お返事してるの可愛いし、可愛いんだ、とにかくうららが。可愛くて愛おしいんだ…
あと個人的に「うわぁ〜!」ってなったのが、うららが雪さんの留守中に自宅に訪問して植木鉢の中に隠してある鍵でお家の中に入るシーンがあるんですけど、私のおじいちゃんのお家とまるっきり同じ仕組みで懐かしくて泣けてしまった。
おじいちゃんの家も何個か裏返しにしてある植木鉢の一つに鈴のキーホルダーがついた鍵が隠してあって、母とおじいちゃんの家に行くとそれをパカっとやって鍵を取るのすごい好きでいつも「私がやる!」って言って鍵とってたなぁとか。
なんか宝探しみたいで小さい私にはスペシャルイベントだったなぁっていう懐かしい思い出が蘇ってしまった。
もう今はきっとそうやってやる人も少なかったりするよなぁ。危ないもんね。
それですごいおじいちゃんと、おじいちゃんの家のたくさんの盆栽たちと砂ボコリのざらざらした感じとかお香の匂いとか、そういうのが一気に思い出されてすごい恋しくなってしまった。は〜泣けた、会いた〜い。
おじいちゃん、ゆっくり元気にしていてくれたらいいなぁ。(おじいちゃんは12年前にお星様になりました😌)
あとうららと幼馴染の男の子との関係性もよかったし好きだった。
お互い特別な恋愛感情とかがある訳でもなくて、でも他の子達よりは深くを理解してくれてるつむぐくんの応援してくれてる姿勢も心地よかったし、いやらしさもまるでなくて、本当に気心知れた幼馴染って感じで。よかった。
BL本見つけても「こういうとこ甘いんだよなぁ」って呟くだけ呟いて見て見ぬふりしてくれるのえ〜奴や…
「何これ?」とか言って土足で踏み込んでくる系男子でないつむぐ、いいぞ!
そういうありがちな展開なったらどうしようって思ったけど。そうならなかったのも嬉しかった。
踏み込みすぎない絶妙な距離感。良い。
なんかいつもうららのこと見守ってるようなつむぐだけど、彼女さんが留学行っちゃう日に「空港行くの途中まで一緒についてきてくれない…?」っておずおずと聞いてくるのも愛おしかったな。
こういう関係性すごい良いよぉ…こういう尊き男女の関係性もっと増えてよぉ…
男女が一緒にいるだけですぐ「好きなの?」「付き合ってるの?」ってそっちに結びつけようとしてくる属性にカテゴライズされてない2人がとっても心地がいいのよ…良い…とっても良い…
あと全編通して余白がたくさんあったのもすごいよかった。
こちらに味わう時間を与えてくれてるの、心地いい。
どう感じるか、委ねてくれてるの、嬉しかった。
この作品が公開されてる時に良い評判が耳に入ってきて「どうしよう、みたいなぁ〜」って思いつつ色々予告編とか検索して見ていた時に、こちらの動画がおすすめで出てきてくれて。
劇中で出てくるBL漫画のボイスコミックなんですけど、この動画もまぁ素晴らしくて泣けちゃったんですよね。当時。
「君といると、僕は僕の形がわかる」がなんかすごい心にぶっ刺さって
自分という心も体も全ての輪郭をなぞって教えてくれる相手って素敵だなぁって思ってじんわりしたのを覚えています。
うららが壁に手を当てて、そこにこの咲良くんがにっこり笑いながら手を合わせてくれてるシーンも美しくて儚くて素敵だった。
あと老婦人の雪さんがBL漫画を「とっても絵が綺麗でとっても素敵なお話なのよ〜」ってただただ純粋に好きで楽しんでる姿がなんか感動する。
自分の中ですごい偏見だけど年齢重ねた方ってそういうものに対して差別的な思考が強い印象があって、(そういう人たちばかりじゃないということはもちろん理解した上で)。
それは私の母がそうだからっていうのが悲しい要因の一つなんですけど。
おばあちゃんだけど素敵なものは素敵ってそのまま目に映るし、男同士だからとかそういう垣根も関係なく「だって素敵じゃない」って捉えてる雪さんがすげぇ素敵だし、この人ってそうやって今までもずっと変に境界線引いたりせずに丁寧に物事見てこられたりしたんだろうなぁって。思って…
こんな大人の女性になるのだ、私も…。って思った。
あと作中で出てくるBL漫画が実際に発売されてるコミックスなんですけど表紙見て「あ、それ知ってる、お、それも知ってるぞ」ってなった私、ほぼウォーリーを探せみたいな感覚で楽しませてもらえて笑ってしまった笑
私もうららと一緒で誰かと共有してこの話題で楽しんだことがないので、2人の姿が羨ましくもあり…でも1人でのんびり好きだなぁって思ってるのも楽しくもあり。
楽しいよね…好きを共有、共鳴できるのってすごい嬉しいよね…
今回映画を拝見して、私の大好きな作品、チェリまほの風間監督が以前言っていた「わざわざBL作品ってジャンル明記されなくても、これから先の未来いつか、一つの恋愛作品としてどんな性別同士の作品も一つの恋愛作品として受け入れられる世界になっていったら僕も嬉しいです」っていう言葉を改めて思い出した。
↑過去記事です。(うるさいくらい語ってるので注意)
うららが必死に何度もBL漫画を人に見られないように隠そう隠そうとするシーンがあるんですけど、なんか恥ずかしく思わなくても良いものを恥ずかしいものとして捉えている現実世界があるから、そうせざるを得ないというのが見ていてすごい寂しくなってしまった。
ただ好きなだけなのに、なんで彼女がこんな行動をとらなきゃいけないのかっていうのが改めて…
いいじゃんね…自分をとっても幸せにしてくれるものなんだよ、だって…いいじゃん…いいじゃんか…(ごねる)
なんかそういう世界が少しずつでも変化していってくれたらいいのにな、とか願いつつ。
普段アニメしか見ない自分にとって、実写でしかも邦画で、こんなにも心満たされる作品が見れて嬉しい1日でした。
こうやって「うわぁ、良い。すごい良い。」って感情を沸かせてくれるものに出会える幸せ。ありがたい。